2012年4月10日火曜日

Future Center ―未来のステークホルダーとの創発場 Principles


フューチャーセンターを始めるということには、二つの意味があります。一つは、フューチャーセンター・セッションを企画し、人を集めて対話の場を持つこと。もう一つは、フューチャーセンターという場所や機能を立ち上げて、様々なテーマが持ち込まれるような、持続的な仕組みを作ることです。様々なテーマについて、他の人がファシリテーターになっても原則が守られるよう、空間やツール、プロセスなどを設計するのです。

もちろんそれぞれは別々のものではありませんので、同時に計画されることもあります。しかし、セッションの質をあなた自身の「個人技」頼みにしないためにも、後者の、「フューチャーセンターの持続的な仕組み」の設計が重要になります。

「� �ューチャーセンターの持続的な仕組み」を設計すると言っても、これまた、フューチャーセンターを運営する「組織」の設計と、フューチャーセンターという「場所」の設計という二通りがあります。理想的には、これら両方が一貫した設計がなされ、同時に立ち上がってほしいものです。

「組織」としては、フューチャーセンター・ディレクターという、テーマの選定、セッションの企画・運営、そして収支の責任を持つ、そのフューチャーセンターの言わば経営者が必要です。ファシリテーターは専任でも外部委託でも構いませんが、テーマに応じて、適切なファシリテーターをスピーディに見つけることができなければなりません。ファシリテーターには、問題解決能力 の高いコンサルタント・タイプ、傾聴・対話などの関係性構築の方法論に強いコーチング・タイプ、対話の内容をその場でグラフィックにしてくれるアーティスト・タイプなど、目的に応じて選んでみてもよいでしょう。そのほかに、参加者のコーディネーションからセッション当日のホスピタリティまで、プロセス全体をケアする人、あるいは機能も必要になります。アウトプットをドキュメントや映像にするならば、ライターエディタービデオクルーなども、必要に応じて頼むとよいでしょう。このように、フューチャーセンター・セッションを運営するには、少なからずコストがかかります。ですからフューチャーセンター・ディレクターは、収益モデルあるいはコスト対 効果モデルを明確に持ち、しっかりとしたフューチャーセンター経営を行っていく必要があるのです。

「場所」の設計が、フューチャーセンターには不可欠です。なぜなら、フューチャーセンター・セッションの成否を分けるポイントが、「あの場所に行けば、この複雑に絡んだ問題が解決するのではないか、今までとは違う雰囲気で、よい対話ができるのではないか」、という期待感にあるからです。そのためには、フューチャーセンターという「場所」のパワーやブランドを高めることが、何より大切になります。


男性のどのような種類が虐待であることがよりがちである

さてここまで、フューチャーセンターの設計には、セッション設計持続的な仕組みの設計があること、持続的な仕組みの設計にも組織の設計場所の設計があることを述べてきました。これらの違いを理解していただいた上で、これらそれぞれの設計を超越したところで、「設計ガイドライン」を示したいと思います。このガイドラインは、各セッションのデザインにも有効ですし、フューチャーセンターの専用空間を作る際にも頼りになるものです。

フューチャーセンター設計ガイドライン
1. 信頼感(Trust)のデザイン
2. 多様性(Diversity)のデザイン
3. 関係性(Relationship)のデザイン
4. 全体性(Wholeness)のデザイン
5. 可視性(Visibility)のデザイン
6. 安心感(Feel Safe)のデザイン

それぞれの設計ガイドラインは、フューチャーセンターの原則に一つひとつ対応しています。ただ原則と違って、設計ガイドラインは「必ずそれを守らなければならないもの」ではない、ということをご理解ください。なぜならば、それぞれのフューチャーセンターは、その目的に合わせて、個性的にカスタマイズしていくことが求められるからです。設計ガイドラインは、原則を実現するためのノウハウやアイディアの方向性、とお考えください。では、一つずつ丁寧に見ていきましょう。

1. 信頼感(Trust)のデザイン
(原則1: FCでは、想いを持った人にとっての大切な問いから、すべてが始まる)

信頼感をデザインするには、どうすればいいでしょうか。空間そのものに、哲学や思想が現れていると、「昨日今日の思いつきで人を集めたわけではないのだな」と思ってもらうことができるでしょう。「世界を変える」という意志をもったフューチャーセンターならば、大きな世界地図に「未解決の問題」をすべてピンで留めているかもしれません。「誰にとっても暮らしやすい社会」をめざすフューチャーセンターには、子供やお年寄り、車椅子などの実物大のグラフィックが壁に描かれているかもしれません。

セッションの中で、信頼感をデザインするには、「想いを持った人」の存在が不可欠になり� ��す。フューチャーセンター・セッションのテーマを提起する人が、この問題を語るにふさわしい人だと誰もが思えれば、セッションに対する信頼感は高まります。テーマ提起者が社会起業家や、リスクをとってプロジェクトを立ち上げたリーダーであれば、それにふさわしいでしょう。逆に、地域の問題を熱意のある「よそ者」が解決しようと立ち上がった場合などでも、その人の人生に「心をふるわせる理由(経験)」があったということを物語ることで、信頼感が高まることもあるでしょう。


ないあなたのようなあなたの親友

もう一つの要素は、ファシリテーターの示す情熱です。ファシリテーター自身が、「この場に集まった人たちには、この問題を解決する力がある」と信頼し、そして「必ず創発を起こす」という強い意図を持っていることが、その場に大きな影響を与えます。ファシリテーターの示す「場への信頼」が、参加者にとてつもなく大きな信頼感を与えるのです。

2. 多様性(Diversity)のデザイン
(原則2: FCでは、新たな可能性を描くために、多様な人たちの知恵が一つの場に集まる)

多様性には、様々なものがあります。国籍、性別、年齢、思想、階層、業界、職業、専門性、等々。フューチャーセンターには、「多様であることをパワーに変えていく力」が必要になります。そのためには、空間もファシリテーションも、「インクルーシブ(除外されてきた人々を包含する)」にデザインされている必要があります。空間的には、できる限りのユニバーサルデザインが施されるべきでしょう。参加者を招く際には、多様な職種から選ぶ、男女のバランスを考えるということはもちろんのこと、積極的に幼児や老人、障害を持った人を招き入れ、「違いから学ぶ」ことを体感することも大事になりま� ��。

ファシリテーションでは、役員とか管理職といった階層を感じさせない、さらには階層間での学び合いを積極的に促すことが必要です。サークルになって座るなど、上座の存在しない形式をとることが、何より大事です。そして、ニックネームで呼び合う、身体を使ったゲームを行う、ワールドカフェのように席を次々と替わって少人数で話すなど、楽しい雰囲気で階層を感じないコミュニケーションができるようにしていきます。

3. 関係性(Relationship)のデザイン
(原則3: FCでは、集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す)

関係性を大切にしていることを表現するためには、「お迎えの仕方」が大切になります。オランダのフューチャーセンターを訪問した際に、Country HouseとShipyardで共通して体験したのが、フューチャーセンター・ディレクター自らが出迎え、玄関脇のウェルカムルームでお茶とお菓子が振る舞われたことです。その小さな部屋に通され、ディレクターとゆっくり話をしているうちに、友人の家に遊びに来たような、あるいはペンションに泊まりに来たような、リラックスした気持ちになりました。「ここでは問題解決より先に、人間関係を大切にしているのだ」ということが、深く心に刻まれました。

このことには、フューチャーセンター内のデザインやアート、飾られた花なども一役買っています。フューチャーセンターのスタッフの顔写真をすべて壁に貼っておきましょう。過去の来場者や、フューチャーセンター・セッション の写真も壁に貼っておけば、あたかもソーシャルネットワークが可視化されたような効果があるでしょう。


無料のアドバイスはどのように男があなたと恋に落ちるために得る方法

4. 全体性(Wholeness)のデザイン
(原則4: FCでは、そこでの共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される)

フューチャーセンターは、そこに来た人たちが、お互いの間に壁を感じることなく、全体で一つの場をつくれるようデザインされるべきでしょう。想像してみてください。最初に到着した人は、どこで時間を過ごすのでしょうか。逆に、すでにグループができてしまっているところに、誰も知り合いのいない人が到着したときに、どのように仲間に入ってもらえばよいでしょうか。知らない人同士でも、自然に対話が始まるようなカウンターがあり、そこに香り豊かなコーヒーでもあれば、壁が少しでも下がるかもしれません。

セッションが始まってからも、講演会スタイルが続いてしまうと、たとえ全員でQ&Aを� �ったとしても、他の参加者と誰とも話をしないで帰る人が少なくないでしょう。2人や4人といった少人数での対話の機会を作ることによって、逆に、全体性を感じさせることになるのです。

皆で一つのトピックについて話すことや、皆で一つの絵や表を完成させることも、全体性を感じる体験でしょう。もしかすると、その日に偶然出会った人もたくさんいるかもしれませんが、皆で一つの協同作業を行うことで、「今日ここに集まった人たちが、社会を変える同志になるかもしれない」と感じさせることができたならば、それは素晴らしい場であったという証明になるでしょう。

5. 可視性(Visibility)のデザイン
(原則5: FCでは、あらゆるものをプロトタイピングする!)

フューチャーセンターでは、一つの正しい答えを論理的に導くのではなく、たくさんの仮説を形にしていきます。一つのアイディアが他人へのインプットとなり、皆で新しいアイディアを次々と作っていくのです。このような雰囲気を生み出すためには、いわゆる会議のようなコの字型の机の並べ方などせず、できるだけカジュアルなセッティングにする必要があります。例えば、テーブルを4人くらいで囲み、テーブルクロス代わりの模造紙に、カラフルなポストイットとサインペンをたくさん並べておきます。アイディアがどんどん目の前に増えていくことが可視化されることで、ワクワク感が高まります。

プロセスの可視化も重要です� �石、ぬいぐるみ、工芸品などのトーキング・オブジェクトは、今誰が話す時間なのかを皆が意識し、聞き手に徹することを助けます。


理想的には壁を全部ホワイトボードにしてしまいたいところですが、そうでなかったとしても、できる限り多くのホワイトボードやイーゼルパッドを会場に持ち込みましょう。ファシリテーターは、参加者が話したことをできる限りすべて書き付けます。ポストイットでも構いません。参加者全員がポストイットを持って、すべて書き付けるようなセッションにしてもいいでしょう。いずれにしても、現れたアイディア一つひとつをしっかりとつかみ取ることが大切です。そのまますぅっと流れていってしまわないように。

一回のセッションが終わったあとも、できればその文脈を空間の中に残しておきたいものです。大きなスチレンボ� ��ドを使って、たくさん貼り付けたポストイットたちをそのまま残しておくこともできますし、少なくとも写真にとって、その場の情熱を再現できるようにしておきましょう。このプロセスそのものが、重要なアウトプットなのですから。

6. 安心感(Feel Safe)のデザイン
(原則6: FCでは、質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする)

最後のデザイン要素は、安心感です。論法的思考や評論家的コメントをすることに、リスクはありません。ですが、自己との対話をしっかりと行うためには、安心な場が必要です。自らの思いこみを取り去り、正直に「なぜなんだろう」と自らに問いかけ、本質的な想いを確認していくプロセスは、他人に見られたくないものかもしれないからです。自分の弱い面や嫌な面が見られてしまうかもしれない、と警戒してしまうと、自我がむくむくと出てきて、「べき論」を語り始めます。だからこそ、他人が自分を攻めたり、揚げ足をとったりしない場なのだここは、という安心感をしっかりと確認することに、大きな価値があ� �のです。

リラックスした雰囲気、そしてコーヒーとクッキーなどは、この安心な場を演出してくれます。人数に対して部屋が広すぎたり、逆に他のグループの声がはっきりと聞こえたりすると、落ち着きがなくなります。メンバーの声がしっかりと響き、伝わりやすいことは、安心した場を創る上で重要な要素でしょう。

そしてもちろん、ファシリテーターの醸し出す雰囲気が、何より大事です。ユーモア豊かに、コミュニケーションの緊張感をできるだけ下げていきます。とは言っても、気をつけなければ行けないのは、ぐだぐだの場にならないようにすることです。リラックスした状態と、だらだらした状態は違います。コミュニケーションの緊張感を下げつつも、ワクワクする緊張感は保た� ��ければなりません。そのためには、対話のプロセスの全体像を示し、きっちりとタイムキープしていくことも大切です。そして全参加者に対して、ある程度の場のコントロール権を渡します。

リラックスして楽しみながらも、全員が「よいアウトプットを出したい」という気持ちをどこかに持っていると、新たな閃きが見つかる可能性が高まります。



These are our most popular posts:

ym-lab Interests

この心理的結びつきを、「関係性(relationship)」と呼びます。 ... これに対して、私の研究 の主眼は、「独立的な実在としての個人」ではなく、「集合体の一員としての個人」に目を 向けることにあります。 ... この考え方は、たとえば、異なる文化に生きる人たちが、 しばしば異なる行動傾向を示すのはなぜか、といった問いに答える上で重要です。関係 性への視点を持つことによって初めて、社会の中で生きる人間の心のありようについて の「メタ理論」(個々の理論を構成する、より高次 ... しかし、誰がそれを始めたかはわかり ません。 read more

性と信仰教育ノート1

とにかく、このテーマについて普段、開けっぴろげに話すことがないのですが、大変重要 に思われるので、これから遠慮なしに述べたい ... やはりあの校長は大学の教授をして いる神父の話を先生たちに聞かせてあげればそれですむと思ったのでしょうか。 ... 性 教育を行うに当たって「総合的な人間学」の観点に立って行えば、誤解が避けられ、 健全な性教育ができるのではないかと思います。 ... 安心し合える関係の中で プライバシーを明け渡し、アイデンティティを解体し合える絆を結ぶのはいったいどういっ た意味を持つのか。 read more

人間関係 - Wikipedia

人間関係(にんげんかんけい、英語:interpersonal relationship)は、人間と人間の関係 のこと。社会や集団や組織の場あるいは個人的な場における、感情的な面も含めた、人 と人の関係のこと。 文脈によっては対人関係とも言う。 read more

CRM.co.jp

CRMを起点にした「CRM.co.jp」の紹介です。 ... 顧客との取引や関係を見直すことで、 売上や利益率を向上させる仕組みのことです。 ... 法人営業の場合には、お得意先を 細かく分類することで、さらに親密な関係を持つべき得意先に注力したり、ご無沙汰をし ていてすぐ ... それを再確認し、その目的を実行するためにCRMを導入する、ということを 明確に意識できればよいのです。 ... ゴールが一つに定まっていないということは、 すなわち、何が一番重要なのか、ひいては何のためにCRMを導入したのか、 ... なぜ CRMなのか? read more

0 件のコメント:

コメントを投稿